説明

液晶配向剤、液晶配向膜、液晶配向膜の形成方法及び液晶表示素子

【課題】液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜、この液晶配向膜の形成方法、液晶配向膜の形成材料として好適な保存安定性に優れ、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤及び液晶配向膜を備える液晶表示素子の提供。
【解決手段】本発明は、[A]ピペリジン構造、フェノール構造及びアニリン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリオルガノシロキサン化合物を含有する液晶配向剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜の形成材料として好適な液晶配向剤、この液晶配向剤から形成される液晶配向膜、液晶配向膜の形成方法及びこの液晶配向膜を備える液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、消費電力が小さく、小型化及びフラット化が容易である等の利点を有することから、携帯電話、液晶テレビ等の液晶表示装置に幅広く用いられている。かかる液晶表示装置の表示モードとして、例えば特許文献1〜4には液晶分子の配向状態の変化に応じ、Twisted Nematic型(TN型)、Super Twisted Nematic型(STN型)、In−Plane Switching型(IPS型)、Vertical Alignment型(VA型)等の液晶セルを有する液晶表示素子が開示されている。
【0003】
かかる各種液晶表示素子の動作原理は、透過型と反射型に大別される。透過型は素子背面からのバックライト光源により表示を行なう。この透過型の液晶表示素子に備えられた液晶配向膜は、バックライト光源からの光に長時間曝されるため、メタルハライドランプ等の照射強度の高いバックライト光源で照射された場合、温度上昇につながる不都合がある。一方、反射型はバックライト用光源を使用せず太陽光等の外部からの光の反射光により表示を行なうため、透過型に比べ消費電力は少ないが、強い紫外線に曝されることになる。また、液晶表示素子の製造工程において、プロセス短縮等の観点から採用され得る液晶滴下方式は、紫外光照射工程を含む。従って、いずれの液晶表示素子においても優れた耐熱性及び耐光性が求められる。これに加え、近年の液晶表示素子には液晶配向性、電圧保持率等の電気特性に優れ、残像の問題を生じさせないことが望まれている。
【0004】
そこで、特定のポリシロキサン溶液から形成され、耐熱性及び耐光性に優れるとされる液晶配向膜の技術が開発されている(特許文献5参照)。しかしながら、この技術によっても近年の製造環境や使用環境の過酷化に伴う上記要求性能は満足しておらず、加えて塗布液の保存安定性が不足しているため、工業的使用上の利便性が高くない。
【0005】
このような状況から、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足し、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な保存安定性に優れる液晶配向剤の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−153622号公報
【特許文献2】特開昭60−107020号公報
【特許文献3】特開昭56−91277号公報
【特許文献4】米国特許第5,928,733号
【特許文献5】特開平9−281502号公報
【特許文献6】特開平6−287453号公報
【特許文献7】特開2003−307736号公報
【特許文献8】特開2004−163646号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜、この液晶配向膜の形成方法、液晶配向膜の形成材料として好適な保存安定性に優れ、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤及び液晶配向膜を備える液晶表示素子の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
ピペリジン構造、フェノール構造又はアニリン構造を有する[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有する液晶配向剤である。
【0009】
当該液晶配向剤は、保存安定性に優れ、この液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する。
【0010】
上記ピペリジン構造は下記式(A−1’)で表され、フェノール構造が下記式(A−2’)で表され、アニリン構造が下記式(A−3’)で表されることが好ましい。
【化1】

(式(A−1’)中、
は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜13のアラルキル基又は1,3−ジオキソブチル基である。
〜Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜13のアラルキル基である。
は単結合、カルボニル基又は**−CONH−である。X〜Xはそれぞれ独立して、単結合、カルボニル基、**−CH−CO−又は**−CH−CH(OH)−である。**で示す結合手はピペリジン環に結合する。
*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【化2】

(式(A−2’)中、Rは炭素数1〜16のアルキル基である。但し、上記アルキル基は骨格鎖中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。nは0〜4の整数である。*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【化3】

(式(A−3’)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1〜16のアルキル基である。但し、上記アルキル基は骨格鎖中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【0011】
当該液晶配向剤において、[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、下記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する部分と、下記式(A−1)、式(A−2)及び式(A−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部分とを有していることが好ましい。
【0012】
【化4】

(式(1)中、Xはエポキシ基を有する1価の有機基である。Yは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。)
【0013】
【化5】

【0014】
【化6】

【0015】
【化7】

(式(A−1)中、R〜R及びX〜Xは上記式(A−1’)と同義である。
式(A−2)中、Rは上記式(A−2’)と同義である。
式(A−3)中、R及びRは上記式(A−3’)と同義である。
式(A−1)〜(A−3)中、Yは単結合、炭素数1〜16のアルカンジイル基である。但し、上記アルカンジイル基は構造中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。Zはカルボキシル基又は水酸基である。)
【0016】
当該液晶配向剤において、[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、上記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する部分を有していることで、[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、ピペリジン構造等のラジカル捕捉能を有する構造を容易に導入でき、結果として、耐光性が向上する。
【0017】
当該液晶配向剤において、上記式(1)におけるXは、下記式(X−1)又は式(X−2)で表される基であることが好ましく、下記式(X−1−1)又は(X−2−1)で表される基であることがより好ましい。
【0018】
【化8】

(式(X−1)及び式(X−2)中、sは0〜3の整数である。tは1〜6の整数である。uは0〜2の整数である。vは0〜6の整数である。*で示す結合手はケイ素原子に結合する。)
【0019】
【化9】

(式(X−1−1)及び式(X−2−1)中、*で示す結合手はケイ素原子に結合する。)
【0020】
上記エポキシ基を有する1価の有機基として、上記特定の基を採用することにより、当該液晶配向剤の[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、上記式(A−1)、式(A−2)又は式(A−3)で表される化合物に由来する部分を導入しやすくなる。
【0021】
当該液晶配向剤では、[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含むことが好ましい。[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含むことで、液晶配向能をより向上できる。
【0022】
上記液晶配向能を有する構造は、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基炭素数2〜20のアルキル基を有するアルコキシアリール基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基及び炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有することが好ましい。液晶配向能を有する構造が、上記特定の基(以下、「液晶配向性基」と称することがある)を有することで、当該液晶配向剤により優れた液晶配向能を付与できる。
【0023】
上記液晶配向能を有する構造は、下記式(B−1)で表される構造を有することが好ましい。
【0024】
【化10】

(式(B−1)中、mは0〜4の整数である。)
【0025】
液晶配向能を有する構造が、上記の特定構造を有することで光配向法によっても、当該液晶配向剤から液晶配向膜を形成することができる。
【0026】
当該液晶配向剤では、[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体(以下、「[B]重合体」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。[B]重合体をさらに含有した液晶配向剤を用いて液晶配向膜を作製することで、より電圧保持率等の電気特性が改善された液晶表示素子が得られる。
【0027】
当該液晶配向剤では、[C]下記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン化合物(以下、「[C]他のポリオルガノシロキサン化合物」と称することがある)をさらに含有することが好ましい。
【0028】
【化11】

(式(2)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。)
【0029】
当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサン化合物をさらに含有することにより、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋を促進させることができ、結果として、得られる液晶表示素子の電圧保持率等をより向上できる。
【0030】
本発明の液晶配向膜の形成方法は、
(1)[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、上記式(B−1)で表される構造を有する液晶配向能を有する構造を含む液晶配向剤を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程及び
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
を有する。
【0031】
当該液晶配向剤を用いる本発明の形成方法により、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜を形成できる。
【0032】
当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜及びこの液晶配向膜を備える液晶表示素子も本発明に好適に含まれる。当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。
【0033】
なお、上記Rが示す炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜13のアラルキル基、R〜Rが示す炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基及び炭素数7〜13のアラルキル基が有する水素原子の一部又は全部は置換されていてもよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜、この液晶配向膜の形成方法、液晶配向膜の形成材料として好適な保存安定性に優れ、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤及び液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供できる。当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0036】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤は、ピペリジン構造、フェノール構造及びアニリン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有する。当該液晶配向剤は、保存安定性に優れ、この液晶配向剤から形成された液晶配向膜は、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する。また、[A]ポリオルガノシロキサン化合物は液晶配向能を有する構造を含むことが好ましく、また当該液晶配向剤は[A]ポリオルガノシロキサン化合物以外の重合体(以下、「他の重合体」と称することがある)を含有することが好ましく、さらに当該液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、任意成分を含有してもよい。以下、[A]ポリオルガノシロキサン化合物、液晶配向能を有する構造、他の重合体及び任意成分について詳述する。
【0037】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物>
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、ピペリジン構造、フェノール構造及びアニリン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有する。また、[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、上記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン(以下、「エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン」と称することがある)に由来する部分と、上記式(A−1)、式(A−2)及び式(A−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部分とを有していることが好ましい。かかる[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A−1)、式(A−2)又は式(A−3)で表される化合物との反応により得られる。当該液晶配向剤において、[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、上記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する部分を有していることで、[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、ピペリジン構造等のラジカル捕捉能を有する構造を容易に導入でき、結果として、耐光性が向上する。以下、ピペリジン構造、フェノール構造、アニリン構造及びエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンについて詳述する。
【0038】
[ピペリジン構造]
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が有するピペリジン構造としては、上記式(A−1’)で表される構造が好ましい。
【0039】
かかるピペリジン構造を有する[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A−1)で表される化合物との反応により得られる。
【0040】
上記R〜Rが示す炭素数1〜6のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0041】
上記Rが示す炭素数6〜20のアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、アントラニル基等が挙げられる。またアリール基の芳香環が有する水素原子の一部又は全部がホルミル基又は炭素数1〜4のアルコキシル基で置換されていることが好ましい。
【0042】
上記R〜Rが示す炭素数7〜13のアラルキル基としては、例えばベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。また、アラルキル基の芳香環が有する水素原子の一部又は全部がホルミル基又は炭素数1〜4のアルコキシル基で置換されていることが好ましい。
【0043】
上記R〜Rが示す炭素数6〜12のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。また、アリール基の芳香環が有する水素原子の一部又は全部がホルミル基又は炭素数1〜4のアルコキシル基で置換されていることが好ましい。
【0044】
上記R〜Rが示す炭素数1〜4のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基等が挙げられる。
【0045】
上記式(A−1)におけるZとしては、カルボキシル基が好ましく、例えば、下記式(A−1−1)〜(A−1−4)で表される化合物が、式(A−1)の好ましい例として挙げられる。
【0046】
【化12】

【0047】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物中の(A−1’)構造の割合としては、Xに対して、2モル%〜80モル%が好ましく、5モル%〜75モル%がより好ましく、25モル%〜60モル%が特に好ましい。
【0048】
[フェノール構造]
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が有するフェノール構造としては、上記式(A−2’)で表される構造が好ましい。
【0049】
かかるフェノール構造を有する[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A−2)で表される化合物との反応により得られる。
【0050】
上記Rが示す炭素数1〜16のアルキル基としては、直鎖状又は分岐状のいずれであってもよく、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等が挙げられる。
【0051】
上記式(A−2)におけるZとしては、カルボキシル基が好ましく、例えば、下記式(A−2−1)〜(A−2−7)で表される化合物が、式(A−2)の好ましい例として挙げられる。
【0052】
【化13】

【0053】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物中の(A−2’)の割合としては、Xに対して、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、25モル%〜75モル%が特に好ましい。
【0054】
[アニリン構造]
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が有するアニリン構造としては、上記式(A−3’)で表される構造が好ましい。
【0055】
かかるアニリン構造を有する[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、上記式(A−3)で表される化合物との反応により得られる。
【0056】
上記R及びRが示す炭素数1〜16のアルキル基としては、上記式(A−2)において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0057】
上記式(A−3)におけるZとしては、カルボキシル基が好ましく、例えば、下記式(A−3−1)〜(A−3−8)で表される化合物が、式(A−3)の好ましい例として挙げられる。
【0058】
【化14】

【0059】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物中の(A−3’)の割合としては、Xに対して、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、25モル%〜75モル%が特に好ましい。
【0060】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン]
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとは、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の構造のうち、ポリマー主鎖としてのポリオルガノシロキサン骨格と、このポリオルガノシロキサンから枝分かれしているポリマー主鎖としてのエポキシ基含有骨格とを含む概念である。
【0061】
上記式(1)中のXが示すエポキシ基を有する1価の有機基としては、エポキシ基を有する1価の有機基であれば特に限定されず、例えばグリシジル基、グリシジルオキシ基、エポキシシクロヘキシル基を含む基等が挙げられる。これらのうち、Xは、上記式(X−1)又は式(X−2)で表される基であることが好ましく、上記式(X−1−1)又は式(X−2−1)で表される基であることがより好ましい。上記エポキシ基を有する1価の有機基として上記特定の基を採用することにより、当該液晶配向剤の[A]ポリオルガノシロキサン化合物に、上記式(A−1)、式(A−2)又は式(A−3)で表される化合物に由来する部分を導入しやすくなる。
【0062】
上記式(1)中のYが示す炭素数1〜10のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0063】
上記式(1)中のYが示す炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0064】
上記式(1)中のYが示す炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0065】
[エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成方法]
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンは、好ましくはエポキシ基を有するシラン化合物又はエポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との混合物を、好ましくは適当な有機溶媒、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0066】
エポキシ基を有するシラン化合物としては、例えば3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルジメチルエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0067】
他のシラン化合物としては、例えばテトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、トリクロロシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリ−n−プロポキシシラン、トリ−i−プロポキシシラン、トリ−n−ブトキシシラン、トリ−sec−ブトキシシラン、フルオロトリクロロシラン、フルオロトリメトキシシラン、フルオロトリエトキシシラン、フルオロトリ−n−プロポキシシラン、フルオロトリ−i−プロポキシシラン、フルオロトリ−n−ブトキシシラン、フルオロトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−i−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリクロロシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリメトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリエトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(トリフルオロメチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−ヘキシル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリクロロシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリメトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリエトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−i−プロポキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−n−ブトキシシラン、2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチルトリ−sec−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリクロロシラン、ヒドロキシメチルトリメトキシシラン、ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−i−プロポキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−n−ブトキシシラン、ヒドロキシメチルトリ−sec−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリクロロシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−i−プロポキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−n−ブトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリ−sec−ブトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−n−プロポキシシラン、ビニルトリ−i−プロポキシシラン、ビニルトリ−n−ブトキシシラン、ビニルトリ−sec−ブトキシシラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリ−n−プロポキシシラン、アリルトリ−i−プロポキシシラン、アリルトリ−n−ブトキシシラン、アリルトリ−sec−ブトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリ−n−プロポキシシラン、フェニルトリ−i−プロポキシシラン、フェニルトリ−n−ブトキシシラン、フェニルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルジクロロシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、メチルジ−n−プロポキシシラン、メチルジ−i−プロポキシシラン、メチルジ−n−ブトキシシラン、メチルジ−sec−ブトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジ−n−プロポキシシラン、ジメチルジ−i−プロポキシシラン、ジメチルジ−n−ブトキシシラン、ジメチルジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジクロロシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジメトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジエトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)〔2−(パーフルオロ−n−オクチル)エチル〕ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジクロロシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジメトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジエトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(3−メルカプトプロピル)ジ−sec−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジクロロシラン、(メチル)(ビニル)ジメトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジエトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−i−プロポキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−n−ブトキシシラン、(メチル)(ビニル)ジ−sec−ブトキシシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ−n−プロポキシシラン、ジビニルジ−i−プロポキシシラン、ジビニルジ−n−ブトキシシラン、ジビニルジ−sec−ブトキシシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジ−n−プロポキシシラン、ジフェニルジ−i−プロポキシシラン、ジフェニルジ−n−ブトキシシラン、ジフェニルジ−sec−ブトキシシラン、クロロジメチルシラン、メトキシジメチルシラン、エトキシジメチルシラン、クロロトリメチルシラン、ブロモトリメチルシラン、ヨードトリメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、n−プロポキシトリメチルシラン、i−プロポキシトリメチルシラン、n−ブトキシトリメチルシラン、sec−ブトキシトリメチルシラン、t−ブトキシトリメチルシラン、(クロロ)(ビニル)ジメチルシラン、(メトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(エトキシ)(ビニル)ジメチルシラン、(クロロ)(メチル)ジフェニルシラン、(メトキシ)(メチル)ジフェニルシラン、(エトキシ)(メチル)ジフェニルシラン等のケイ素原子を1個有するシラン化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0068】
市販品として入手できるものとしては、例えば
KC−89、KC−89S、X−21−3153、X−21−5841、X−21−5842、X−21−5843、X−21−5844、X−21−5845、X−21−5846、X−21−5847、X−21−5848、X−22−160AS、X−22−170B、X−22−170BX、X−22−170D、X−22−170DX、X−22−176B、X−22−176D、X−22−176DX、X−22−176F、X−40−2308、X−40−2651、X−40−2655A、X−40−2671、X−40−2672、X−40−9220、X−40−9225、X−40−9227、X−40−9246、X−40−9247、X−40−9250、X−40−9323、X−41−1053、X−41−1056、X−41−1805、X−41−1810、KF6001、KF6002、KF6003、KR212、KR−213、KR−217、KR220L、KR242A、KR271、KR282、KR300、KR311、KR401N、KR500、KR510、KR5206、KR5230、KR5235、KR9218、KR9706(以上、信越化学工業社);
グラスレジン(昭和電工社);
SH804、SH805、SH806A、SH840、SR2400、SR2402、SR2405、SR2406、SR2410、SR2411、SR2416、SR2420(以上、東レ・ダウコーニング社);
FZ3711、FZ3722(以上、日本ユニカー社);
DMS−S12、DMS−S15、DMS−S21、DMS−S27、DMS−S31、DMS−S32、DMS−S33、DMS−S35、DMS−S38、DMS−S42、DMS−S45、DMS−S51、DMS−227、PSD−0332、PDS−1615、PDS−9931、XMS−5025(以上、チッソ社);
メチルシリケートMS51、メチルシリケートMS56(以上、三菱化学社);
エチルシリケート28、エチルシリケート40、エチルシリケート48(以上、コルコート社);
GR100、GR650、GR908、GR950(以上、昭和電工社)等の部分縮合物が挙げられる。
【0069】
これらの他のシラン化合物のうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン又はジメチルジエトキシシランが好ましい。
【0070】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンのエポキシ当量としては、100g/モル〜10,000g/モルが好ましく、150g/モル〜1,000g/モルがより好ましく、150g/モル〜300g/モルが特に好ましい。従って、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成に際し、エポキシ基を有するシラン化合物と他のシラン化合物との使用割合としては、得られるポリオルガノシロキサンのエポキシ当量が上記範囲となるように設定することが好ましい。
【0071】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成に際し、使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、ケトン化合物、エステル化合物、エーテル化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0072】
炭化水素化合物としては、例えばトルエン、キシレン等が挙げられる。
【0073】
ケトン化合物としては、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
【0074】
エステル化合物としては、例えば酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸i−アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、乳酸エチル等が挙げられる。
【0075】
エーテル化合物としては、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0076】
アルコール化合物としては、例えば1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル等が挙げられる。
【0077】
これらのうち非水溶性のものが好ましい。
【0078】
有機溶媒の使用量としては、全シラン化合物100質量部に対して、10質量部〜10,000質量部が好ましく、50質量部〜1,000質量部がより好ましい。
【0079】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の水の使用量としては、全シラン化合物に対して、0.5倍モル〜100倍モルが好ましく、1倍モル〜30倍モルがより好ましい。
【0080】
触媒としては、例えば酸、アルカリ金属化合物、有機塩基、チタン化合物、ジルコニウム化合物等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0081】
アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド等が挙げられる。
【0082】
有機塩基としては、例えば
エチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロール等の1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。
【0083】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを製造する際の触媒としては、アルカリ金属化合物又は有機塩基が好ましい。アルカリ金属化合物又は有機塩基を触媒として用いることにより、エポキシ基の開環等の副反応を生じることなく、高い加水分解・縮合速度でポリオルガノシロキサンを得ることができるため、生産安定性に優れる。
【0084】
また、触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いて合成されたエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと上記式(A−1)、式(A−2)又は式(A−3)でそれぞれ表される化合物との反応物を含有する当該液晶配向剤は、保存安定性が極めて優れるため好都合である。その理由は、ゾル−ゲル法の科学(アグネ承風社、1988年、154〜161ページ)に指摘されているように、加水分解、縮合反応において触媒としてアルカリ金属化合物又は有機塩基を用いると、ランダム構造又はかご型構造等の三次元的な構造が形成され、シラノール基の含有割合が少ないポリオルガノシロキサンが得られるためではないかと推察される。すなわち、かかるポリオルガノシロキサンは、シラノール基の含有割合が少ないため、シラノール基同士の縮合反応が抑えられ、さらに本発明の液晶配向剤が後述の他の重合体を含有するものである場合にはシラノール基と他の重合体との縮合反応が抑えられるため、保存安定性に優れる結果になるものと推察される。
【0085】
触媒としては、有機塩基がより好ましく、3級の有機アミン及び4級の有機アミンが特に好ましい。有機塩基の使用量としては、有機塩基の種類、温度等の反応条件により異なるが、例えば全シラン化合物に対して、0.01倍モル〜3倍モルが好ましく、0.05倍モル〜1倍モルがより好ましい。
【0086】
エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンを合成する際の加水分解又は加水分解・縮合反応は、エポキシ基を有するシラン化合物と必要に応じて他のシラン化合物とを有機溶媒に溶解し、この溶液を有機塩基及び水と混合して、例えば油浴等により加熱することにより実施することが好ましい。
【0087】
加水分解・縮合反応時における油浴の加熱温度としては、130℃以下が好ましく、40℃〜100℃がより好ましい。加熱時間としては、0.5時間〜12時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。加熱中は、混合液を撹拌してもよいし、還流下に置いてもよい。
【0088】
反応終了後、反応液から分取した有機溶媒層を水で洗浄することが好ましい。洗浄に際しては、少量の塩を含む水、例えば0.2質量%程度の硝酸アンモニウム水溶液等で洗浄することが、洗浄操作が容易となる点で好ましい。洗浄は洗浄後の水層が中性になるまで行い、その後有機溶媒層を、必要に応じて無水硫酸カルシウム、モレキュラーシーブス等の乾燥剤で乾燥した後、溶媒を除去することにより、目的とするエポキシ基を有するポリオルガノシロキサンが得られる。
【0089】
本発明においては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンとして市販されているものを用いてもよい。このような市販品としては、例えばDMS−E01、DMS−E12、DMS−E21、EMS−32(以上、チッソ社)等が挙げられる。
【0090】
エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンのゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と称することがある)としては、500〜100,000が好ましく、1,000〜10,000がより好ましく、1,000〜5,000が特に好ましい。なお、本明細書においてMwは、下記仕様のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値である。
カラム:東ソー社、TSKgelGRCXLII
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
圧力:6.8MPa
【0091】
<液晶配向能を有する構造>
当該液晶配向剤では、[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含むことが好ましい。[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含むことで、液晶配向能をより向上できる。
【0092】
液晶配向能を有する構造が有する基としては、上記の液晶配向性基が好ましい。液晶配向能を有する構造が、上記特定の基を有することで当該液晶配向剤により優れた液晶配向能を付与できる。
【0093】
上記ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基としては、ステロイド骨格を有する炭素数17〜30の1価の有機基が好ましく、例えばコレスタ−3−イル基、コレスタ−5−エン−3−イル基、コレスタ−24−エン−3−イル基、コレスタ−5,24−ジエン−3−イル基、ラノスタン−3−イル基等が挙げられる。
【0094】
上記炭素数2〜20のアルキル基としては、例えばエチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ラウリル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−ステアリル基、n−エイコシル基等が挙げられる。アルキル基の炭素数としては、4〜20がより好ましい。
【0095】
上記炭素数1〜20のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、4,4,4−トリフルオロブチル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペンチル基、3,3,4,4,5,5,5−ヘプタフルオロペンチル基等が挙げられる。
【0096】
上記炭素数2〜20のアルキル基を有するアルコキシアリール基としては、例えばn−プロピルオキシアリール基、n−ブチルオキシアリール基、n−ペンチルオキシアリール基、n−ヘキシルオキシアリール基、n−ヘプチルオキシアリール基、n−オクチルオキシアリール基等が挙げられる。
【0097】
上記炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基としては、例えばn−プロピルシクロヘキシル基、n−ブチルシクロヘキシル基、n−ペンチルシクロヘキシル基、n−ヘキシルシクロヘキシル基、n−ヘプチルシクロヘキシル基、n−オクチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0098】
上記炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基としては、例えばトリフルオロメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0099】
上記炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基としては、例えば4,4,4−トリフルオロブトキシシクロヘキシル基、4,4,5,5,5−ペンタフルオロペントキシシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0100】
液晶配向能を有する構造は、上記式(B−1)で表される構造をさらに有することが好ましい。上記液晶配向能を有する構造が、特定の構造を有することで、光配向法によっても、当該液晶配向剤から液晶配向膜を形成することができる。
【0101】
液晶配向能を有する構造を含む[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンと、下記式(B−2)で表される液晶配向能を有する化合物との反応により得られる。
−T (B−2)
【0102】
上記式(B−2)中、Rは液晶配向能を有する構造を含む基である。Tはカルボキシル基又は水酸基である。
【0103】
上記式(B−2)の好ましい例としては、例えば下記式(B−2−1)〜(B−2−8)で表される化合物が挙げられる。
【0104】
【化15】

【0105】
上記式(B−2−1)中、Rは上記の液晶配向性基である。Xは単結合、酸素原子、硫黄原子、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−COO−、−NHCO−、−CONH−、−CO−、−OCO−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。Xは単結合、酸素原子、フェニレン基、−CO−、−OCO−、−(CH−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。aは1〜6の整数である。Tは上記式(B−2)と同義である。
【0106】
【化16】

【0107】
上記式(B−2−2)中、R、X及びTは、上記式(B−2−1)と同義である。
は単結合、酸素原子、硫黄原子、フェニレン基、−COO−、−NHCO−、−CONH−、−CO−、−OCO−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。
【0108】
【化17】

【0109】
上記式(B−2−3)中、R及びTは、上記式(B−2−1)と同義である。
は単結合、酸素原子、−CO−、−(CH−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。aは1〜6の整数である。mは0〜4の整数である。
【0110】
【化18】

【0111】
上記式(B−2−4)〜(B−2−6)中、R及びTは、上記式(B−2−1)と同義である。
は単結合、酸素原子、硫黄原子、−COO−、−NHCO−、−CONH−、−CO−、−OCO−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。
は単結合、酸素原子、硫黄原子、−(CH−、−CO−又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。aは1〜6の整数である。
【0112】
【化19】

【0113】
上記式(B−2−7)及び(B−2−8)中、R及びTは、上記式(B−2−1)と同義である。Xは、単結合、酸素原子、−COO−、−OCO−、−(CH又はこれらのうち2種以上を組み合わせた連結基である。aは1〜6の整数である。
【0114】
なお、上記式(B−2−1)〜(B−2−8)において、O−O結合又はα,β−ジケト構造を形成するような置換基の組み合わせは許容されないものとする。
【0115】
上記式(B−2−1)〜(B−2−8)のうち、下記式(B−2−1−1)〜式(B−2−8−2)で表される化合物がより好ましい。
【0116】
【化20】

【化21】

【化22】

【0117】
上記式(B−2−1−1)〜式(B−2−8−2)において、Rは上記式(B−2−1)と同義である。aは1〜6の整数である。
【0118】
上記式(B−1)で表される構造を含む基である場合の液晶配向能を有する化合物の好ましい他の例としては、例えば下記式(B−2−1−1’)〜式(B−2−8−1’)で表される化合物が挙げられる。
【0119】
【化23】

【0120】
上記において、Rは上記式(B−2−1)と同義である。
【0121】
一方、上記式(B−2)におけるRがステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜20のアルキル基を有するアルコキシアリール基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基及び炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基からなら群より選ばれる少なくとも1種を有するが、上記式(B−1)で表される構造を含まないものである場合の化合物(B−2)としては、下記式(B−2−9)〜式(B−2−11)で表される化合物等が好ましい。
【0122】
【化24】

【0123】
上記式(B−2−9)〜式(B−2−11)中のR及びTは、上記式(B−2−1)と同義である。Xは単結合、酸素原子、−COO−又は−OCO−である。
上記式(B−2−11)中、pは1又は2である。
【0124】
上記式(B−2−9)においてTがカルボキシル基である化合物としては、例えばn−ブタン酸、n−ペンタン酸、n−ヘキサン酸、n−ヘプタン酸、n−オクタン酸、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ラウリン酸、n−ドデカン酸、n−トリデカン酸、n−テトラデカン酸、n−ペンタデカン酸、n−ヘキサデカン酸、n−ヘプタデカン酸、n−ステアリン酸、n−ノナデカン酸、n−エイコサン酸、テトラヒドロアビエチン酸、モノコレスタニルスクシネート、モノコレスタニルグルタレート、下記式で表される化合物等が挙げられる。
2h+1−C2i−COOH
【0125】
上記式中、hは1〜3の整数である。iは3〜18の整数である。
【0126】
上記式(B−2−9)においてTが水酸基である化合物としては、例えば1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、1−デカノール、1−ウンデカノール、1−ドデカノール、1−トリデカノール、1−テトラデカノール、1−ペンタデカノール、1−ヘキサデカノール、1−ヘプタデカノール、1−オクタデカノール、1−ノナデカノール、1−エイコサノール等が挙げられる。
【0127】
上記式(B−2−10)においてTがカルボキシル基である化合物としては、例えば4−メチル安息香酸、4−エチル安息香酸、4−(n−プロピル)安息香酸、4−(n−ブチル)安息香酸、4−(n−ペンチル)安息香酸、4−(n−ヘキシル)安息香酸、4−(n−ヘプチル)安息香酸、4−(n−オクチル)安息香酸、4−(n−ノニル)安息香酸、4−(n−デシル)安息香酸、4−(n−ドデシル)安息香酸、4−(n−オクタデシル)安息香酸、4−(n−メトキシ)安息香酸、4−(n−エトキシ)安息香酸、4−(n−プロポキシ)安息香酸、4−(n−ブトキシ)安息香酸、4−(n−ペンチルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘキシルオキシ)安息香酸、4−(n−ヘプチルオキシ)安息香酸、4−(n−オクチルオキシ)安息香酸、4−(n−ノニルオキシ)安息香酸、4−(n−デシルオキシ)安息香酸、4−(n−ドデシルオキシ)安息香酸、4−(n−オクタデシルオキシ)安息香酸、下記式で表される化合物等が挙げられる。
【0128】
【化25】

【0129】
上記式中、jは5〜20の整数である。kは1〜3の整数である。maは0〜18の整数である。nは1〜18の整数である。
【0130】
上記式(B−2−11)においてTがカルボキシル基である化合物としては、例えば4−(n−ブチル)シクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ペンチル)シクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ブチル)ビシクロヘキシルカルボン酸、4−(n−ペンチル)ビシクロヘキシルカルボン酸等が挙げられる。
【0131】
<液晶配向能を有する化合物の合成方法>
上記式(B−2−1)〜式(B−2−11)で表される化合物は、市販品として入手でき又は有機化学の定法を適宜に組み合わせることにより合成できる。以下、Rがアルキル基である化合物を例に合成方法を説明するが、Rがアルキル基以外の化合物についてもこれと同様に操作して又はこれに準ずる合成方法によって合成できることは、当業者には容易に理解されよう。
【0132】
上記式(B−2−1−1)で表される化合物は、例えばヒドロキシ桂皮酸とRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下で加熱して反応させた後、水酸化ナトリウム等の適当なアルカリ水溶液で加水分解することにより得られる。
【0133】
上記式(B−2−1−2)で表される化合物は、例えばヒドロキシ桂皮酸とRに相当するアルキル基を有するアルキルカルボン酸クロリドとを炭酸カリウム等の適当な塩基存在下で0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0134】
上記式(B−2−1−4)で表される化合物は、例えばヒドロキシ安息香酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキル又はトシル化アルキルとを炭酸カリウム等の適当な塩基存在下で室温〜100℃の温度で反応させた後、水酸化ナトリウム等の適当なアルカリ水溶液で加水分解し、さらにこれを塩化チオニルにより酸クロリドとした後、これを炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0135】
上記式(B−2−1−5)で表される化合物は、例えばヒドロキシ安息香酸とRに相当するアルキル基を有するアルキルカルボン酸クロリドとをトリエチルアミン等の適当な塩基存在下で0℃〜室温の温度で反応させた後、塩化チオニルにより酸クロリドとし、これを炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0136】
上記式(B−2−1−6)で表される化合物は、例えば4−アルキル安息香酸を塩化チオニルにより酸クロリドとし、これを炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0137】
上記式(B−2−1−7)で表される化合物は、例えば4−ヒドロキシシクロヘキシルカルボン酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを水素化ナトリウム又は金属ナトリウム等の適当なアルカリの存在下で反応させてエーテルとした後、水酸化ナトリウム等のアルカリ水溶液で加水分解し、さらに塩化チオニルで酸クロリドとした後、これを炭酸カリウム等の適当な塩基の存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0138】
上記式(B−2−1−8)で表される化合物は、例えばRに相当するアルキル基を有する4−アルキルシクロヘキシルカルボン酸を塩化チオニルにより酸クロリドとしたものを、炭酸カリウム等の適当な塩基存在下でヒドロキシ桂皮酸と0℃〜室温の温度で反応させることにより得られる。
【0139】
上記式(B−2−1−9)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとヒドロキシベンズアルデヒドを炭酸カリウム等の塩基存在下で反応させてエーテル結合を形成した後、4−アセチル安息香酸を水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得られる。上記式(B−2−1−10)〜式(B−2−1−15)で表される化合物もこれに準じた方法により得られる。
【0140】
上記式(B−2−2−1)で表される化合物は、例えば4−ヨードフェノールとRに相当するアルキル基を有するアルキルアクリレートとを、パラジウム及びアミンを触媒として反応(Heck反応)させた後、反応生成物に無水こはく酸又は無水グルタル酸等の所望の環状酸無水物を開環付加することにより得られる。
【0141】
上記式(B−2−2−2)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ホルミル安息香酸を水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得られる。上記式(B−2−2−3)で表される化合物もこれに準じた方法により得られる。
【0142】
上記式(B−2−2−4)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ヒドロキシベンズアルデヒドを水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得られる。上記式(B−2−2−5)で表される化合物もこれに準じた方法により得られる。
【0143】
上記式(B−2−3−1)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するアクリル酸エステルと4−ブロモ桂皮酸をパラジウム触媒を用いて得る方法で得られる。これに準じた方法により上記式(B−2−3−2)で表される化合物も得られる。
【0144】
上記式(B−2−4−1)で表される化合物は、例えばRがアルキル基である場合には、Rに相当するアルキル基を有するアルキルこはく酸無水物と4−アミノ桂皮酸とを、酢酸中における還流下又はトリエチルアミン等の適当な塩基触媒の存在下にトルエン若しくはキシレン中における還流下で反応させる方法により得ることができ、Rがフルオロアルキル基である場合には、無水マレイン酸をp−トルイジン等の適当な保護基で保護した後、Rに相当するフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルヨージドとのグリニャール反応によりカップリングした後、加水分解により脱保護し、脱水閉環を行った後、4−アミノ桂皮酸と反応させる方法により得られる。
【0145】
上記式(B−2−4−2)で表される化合物は、例えば以下のいずれかの方法により合成できる。第一の方法として、無水マレイン酸をp−トルイジン等の適当な保護基で保護し、これにRに相当するアルキル基を有するアルコールを炭酸カリウムとの適当な塩基存在下でマイケル付加した後、加水分解により脱保護し、さらに脱水閉環を行い、その生成物を上記式(B−2−4−1)で表される化合物の合成におけるのと同様にして4−アミノ桂皮酸と反応させる方法が挙げられる。第二の方法として、リンゴ酸メチルとRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルとを例えば酸化銀の存在下で反応させてエーテルとした後、加水分解し、さらに脱水閉環を行い、その生成物を上記式(B−2−4−1)で表される化合物の合成方法と同様に操作して4−アミノ桂皮酸と反応させる方法が挙げられる。
【0146】
上記式(B−2−4−3)で表される化合物は、例えばRに相当するアルキル基を有するアルコールの代わりにRに相当するアルキル基を有するチオールを使用する以外は上記式(B−2−4−2)で表される化合物の合成における第一の方法と同様に操作して得られる。
【0147】
上記式(B−2−5−1)で表される化合物は、例えば1,2,4−トリカルボキシシクロヘキサン無水物を塩化チオニルで酸クロリドとした後、Rに相当するアルキル基を有するアルコールとトリエチルアミン等の適当な塩基の存在下で反応させてエステル化し、その生成物を上記式(B−2−4−1)で表される化合物の合成方法と同様に操作して4−アミノ桂皮酸と反応させることにより得られる。
【0148】
上記式(B−2−6−1)で表される化合物は、例えば所望の化合物に対応する化合物R−OHと無水トリメリット酸ハライドとを反応させて中間体であるエステル化合物を合成し、次いでこのエステル化合物と4−アミノ桂皮酸とを反応させることにより合成できる。中間体エステル化合物の合成は、好ましくは適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下で行われる。使用できる溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン等を、塩基性化合物としては、例えばトリエチルアミン等が挙げられる。エステル化合物と4−アミノ桂皮酸との反応は、例えば両者を酢酸中で還流する方法、両者をトルエン又はキシレン中で適当な触媒(例えば硫酸等の酸触媒又はトリエチルアミン等の塩基触媒)の存在下に還流する方法等が挙げられる。
【0149】
上記式(B−2−6−2)で表される化合物は5−ヒドロキシフタル酸を例えばジエチルベンゼン中で還流させて脱水閉環させて酸無水物とした後、4−アミノ桂皮酸と上述と同様の方法で反応させて第一中間体であるイミド化合物を合成し、次いでこのイミド化合物と所望の化合物に対応する化合物R−H(Hはハロゲン原子である)を反応させることにより合成できる。このとき、好ましくは適当な溶媒中、塩基性化合物の存在下に行われる。使用できる溶媒としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド等のアミド化合物等を、塩基性化合物としては、例えば炭酸カリウム等が挙げられる。
【0150】
上記式(B−2−7−1)で表される化合物は、例えば4−ニトロ桂皮酸を、炭酸カリウムの存在下にRに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルと反応させてエステルとし、そのニトロ基を例えば塩化スズにより還元してアミノ基とした後、その生成物を1,2,4−トリカルボキシシクロヘキシルシクロヘキサン無水物と反応させることにより得られる。後者の反応は、例えば原料化合物を酢酸中で還流する方法又はトリエチルアミン等の適当な塩基触媒の存在下にトルエン若しくはキシレン中で還流する方法により行うことができる。これに準じた方法により、上記式(B−2−8−1)で表される化合物を合成できる。
【0151】
上記式(B−2−8−2)で表される化合物は、上記式(B−2−7−1)で表される化合物の合成において、1,2,4−トリカルボキシシクロヘキシルシクロヘキサン無水物の代わりにヒドロキシフタル酸を用いてイミド環を有する桂皮酸誘導体を合成した後、こはく酸無水物又はグルタル酸無水物と反応させることにより得られる。
【0152】
上記式(B−2−1−1’)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有するハロゲン化アルキルと4−ヒドロキシベンズアルデヒドとを、炭酸カリウム等の塩基存在下で反応させてエーテル結合を形成した後、4−ヒドロキシアセトフェノンを水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得られる。上記式(B−2−1−2’)〜式(B−2−1−7’)で表される化合物も上記に準じた方法により得られる。
【0153】
上記式(B−2−2−1’)で表される化合物は、例えば4−ヨードフェノールとRに相当するアルキル基を有するアルキルアクリレートとを、パラジウム及びアミンを触媒として反応させることにより得られる。
【0154】
上記式(B−2−2−2’)で表される化合物は、Rに相当するアルキル基を有する4−アルキルアセトフェノンと4−ヒドロキシベンズアルデヒドとを、水酸化ナトリウム存在下でアルドール縮合させて得られる。上記式(B−2−1−3’)で表される化合物も上記に準じた方法により得られる。
【0155】
上記式(B−2−8−1’)で表される化合物は、例えば4−ニトロ桂皮酸を塩化チオニルにより酸クロリドとした後、Rに相当するアルキル基を有するアルコールと反応させてエステルとし、そのニトロ基を例えば塩化スズにより還元してアミノ基とした後、その生成物をヒドロキシフタル酸無水物と反応させることにより得られる。後者の反応は例えば原料化合物を酢酸中で還流する方法又はトリエチルアミン等の適当な塩基触媒の存在下にトルエン若しくはキシレン中で還流する方法により行うことができる。
【0156】
これらの化合物(B−2)のうち、好ましくは上記式(B−2−1−1)、式(B−2−1−3)、式(B−2−1−4)、式(B−2−1−6)〜式(B−2−1−8)、式(B−2−1−16)、式(B−2−1−19)、式(B−2−1−21)、式(B−2−4−1)、式(B−2−4−2)、式(B−2−5−1)及び式(B−2−7−1)で表される化合物である。
【0157】
また、液晶配向能を有する構造が上記式(B−1)で表される構造を有さないものとしては、n−ブタン酸、n−ヘキサン酸、n−オクタン酸、n−ラウリン酸、n−ステアリン酸、4−n−オクタデシル安息香酸、4−n−ドデシル安息香酸、4−n−オクチル安息香酸、4−n−ヘキシル安息香酸、4−n−オクタデシルオキシ安息香酸、4−n−ドデシルオキシ安息香酸、4−n−オクチルオキシ安息香酸、4−n−ヘキシルオキシ安息香酸、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−オクタデカンチオール、モレコレスタニルスクシネート及び下記式で表される化合物が挙げられる。
【0158】
【化26】

【0159】
本明細書においては、液晶配向能を有する構造が上記式(B−1)で表される構造を有さない化合物を、「他のプレチルト角発現性化合物」という。このようなポリオルガノシロキサン化合物の液晶配向能を有する構造の割合としては、Xに対して、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、25モル%〜75モル%が特に好ましい。
【0160】
本発明における[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンにおけるSi−X結合の一部が残存していることが好ましい。従って、反応を行うに際しては、化合物(A−1)、化合物(A−2)、化合物(A−3)及び液晶配向能を有する化合物の合計のモル数が、エポキシ構造を有するポリオルガノシロキサンの有する基Xのモル数よりも少ないことが好ましい。この場合、上記式(B−1)で表される基を有する液晶配向能を有する化合物の使用割合が、化合物の全量に対して好ましくは50モル%以上である場合、かかる[A]ポリオルガノシロキサン化合物を含有する液晶配向剤は光配向法によって良好な液晶配向性を示す液晶配向膜を形成できる。
【0161】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成方法>
[A]ポリオルガノシロキサン化合物は、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン、上記式(A−1)〜式(A−3)で表される化合物及び必要に応じて液晶配向能を有する化合物とを好ましくは触媒の存在下において、有機溶媒中で反応させることにより合成できる。かかる製造方法は簡便であり、かつそれぞれの構造の導入率を高くできる点で好適である。
【0162】
式(A−1)〜式(A−3)で表される化合物及び液晶配向能を有する化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0163】
また、式(A−1)〜式(A−3)で表される化合物及び液晶配向能を有する構造がカルボキシル基を有する場合、化合物の一部を他のカルボン酸で置き換えて反応を行ってもよい。この場合、他のカルボン酸の使用割合としては、化合物と他のカルボン酸との合計に対して、50モル%以下が好ましい。
【0164】
上記触媒としては、例えば有機塩基又はエポキシ化合物と酸無水物との反応を促進するいわゆる硬化促進剤が用いられる。
【0165】
有機塩基としては、例えば
エチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、ピペリジン、ピロリジン、ピロールの如き1〜2級有機アミン;
トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジアザビシクロウンデセン等の3級の有機アミン;
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級の有機アミン等が挙げられる。これらのうち、3級の有機アミン及び4級の有機アミンが好ましい。
【0166】
硬化促進剤としては、例えば
ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、シクロヘキシルジメチルアミン、トリエタノールアミン等の3級アミン;
2−メチルイミダゾール、2−n−ヘプチルイミダゾール、2−n−ウンデシルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジ(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−フェニル−4,5−ジ〔(2’−シアノエトキシ)メチル〕イミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−n−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、1−(2−シアノエチル)−2−エチル−4−メチルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−(2’−n−ウンデシルイミダゾリル)エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔2’−エチル−4’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジン、2−メチルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾールのイソシアヌル酸付加物、2,4−ジアミノ−6−〔2’−メチルイミダゾリル−(1’)〕エチル−s−トリアジンのイソシアヌル酸付加物等のイミダゾール化合物;
ジフェニルフォスフィン、トリフェニルフォスフィン、亜リン酸トリフェニル等の有機リン化合物;
ベンジルトリフェニルフォスフォニウムクロライド、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムブロマイド、メチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、n−ブチルトリフェニルフォスフォニウムブロマイド、テトラフェニルフォスフォニウムブロマイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムヨーダイド、エチルトリフェニルフォスフォニウムアセテート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウム、o,o−ジエチルフォスフォロジチオネート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムベンゾトリアゾレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルフォスフォニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルフォスフォニウムテトラフェニルボレート等の4級フォスフォニウム塩;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、その有機酸塩等のジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体等の有機金属化合物;
テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニル等のホウ素化合物;
塩化亜鉛、塩化第二錫等の金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド又はアミンとエポキシ樹脂との付加物等のアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
イミダゾール化合物、有機リン化合物、4級フォスフォニウム塩等の硬化促進剤の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩等の高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等の潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0167】
これらのうち、4級アンモニウム塩が好ましく、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムクロライド、テトラ−n−ブチルアンモニウムクロライドがより好ましい。
【0168】
触媒の使用量としては、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン100質量部に対して100質量部以下が好ましく、0.01質量部〜100質量部がより好ましく、0.1質量部〜20質量部が特に好ましい。
【0169】
反応温度としては、0℃〜200℃が好ましく、50℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜50時間が好ましく、0.5時間〜20時間がより好ましく。
【0170】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成に際し、使用できる有機溶媒としては、例えば炭化水素化合物、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物、アミド化合物、アルコール化合物等が挙げられる。これらのうち、エーテル化合物、エステル化合物、ケトン化合物が、原料及び生成物の溶解性ならびに生成物の精製のし易さの観点から好ましい。溶媒の含有量としては、固形分濃度(反応溶液中の溶媒以外の成分の合計質量が溶液の全質量に占める割合)が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは5質量%〜50質量%となる量で含有される。
【0171】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物のMwとしては、1,000〜10,000,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましく、3,000〜50,000が特に好ましい。
【0172】
<他の重合体>
他の重合体は、当該液晶配向剤の溶液特性及び得られる液晶配向膜の電気特性をより改善するために好適に当該液晶配向剤に含有できる。他の重合体としては、例えば[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物、ポリアミック酸エステル、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン−フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0173】
これらのうち[B]重合体、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物が好ましい。当該液晶配向剤が[B]重合体をさらに含有した液晶配向剤を用いて液晶配向膜を作製することで、より電圧保持率等の電気特性が改善された液晶表示素子が得られる。また、当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサン化合物をさらに含有することにより、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋を促進させることができ、結果として、得られる液晶表示素子の電圧保持率等をより向上できる。以下、[B]重合体、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物について詳述する。
【0174】
<[B]重合体>
[ポリアミック酸]
[B]重合体としてのポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを反応させることにより得られる。
【0175】
テトラカルボン酸二無水物としては、例えば脂肪族テトラカルボン酸二無水物、脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの他に、特願2009−157556号に記載のテトラカルボン酸二無水物を用いることができる。これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0176】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばブタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0177】
脂環式テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、3−オキサビシクロ[3.2.1]オクタン−2,4−ジオン−6−スピロ−3’−(テトラヒドロフラン−2’,5’−ジオン)、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、3,5,6−トリカルボキシ−2−カルボキシメチルノルボルナン−2:3,5:6−二無水物、2,4,6,8−テトラカルボキシビシクロ[3.3.0]オクタン−2:4,6:8−二無水物、4,9−ジオキサトリシクロ[5.3.1.02,6]ウンデカン−3,5,8,10−テトラオン等が挙げられる。
【0178】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えばピロメリット酸二無水物等が挙げられるほか特願2009−84462に記載のテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0179】
これらのテトラカルボン酸二無水物のうち、脂環式テトラカルボン酸二無水物が好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物が特に好ましい。
【0180】
2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物の使用量としては、全テトラカルボン酸二無水物に対して、10モル%以上含が好ましく、20モル%以上がより好ましく、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物又は1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物のみからなることが、特に好ましい。
【0181】
ジアミン化合物としては、例えば脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、ジアミノオルガノシロキサン、芳香族ジアミン等が挙げられる。これらジアミン化合物は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。これらの他に特願2009−157556号に記載のジアミンを用いることができる。
【0182】
脂肪族ジアミンとしては、例えばメタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等が挙げられる。
【0183】
脂環式ジアミンとしては、例えば1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0184】
ジアミノオルガノシロキサンとしては、例えば1,3−ビス(3−アミノプロピル)−テトラメチルジシロキサン等が挙げられるほか、特願2009−84462に記載のジアミンが挙げられる。
【0185】
芳香族ジアミンとしては、例えばp−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、1,5−ジアミノナフタレン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,7−ジアミノフルオレン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(p−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,6−ジアミノピリジン、3,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノピリミジン、3,6−ジアミノアクリジン、3,6−ジアミノカルバゾール、N−メチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−エチル−3,6−ジアミノカルバゾール、N−フェニル−3,6−ジアミノカルバゾール、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−ベンジジン、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)−N,N’−ジメチルベンジジン、1,4−ビス−(4−アミノフェニル)−ピペラジン、3,5−ジアミノ安息香酸、ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、テトラデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ペンタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、ヘキサデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、オクタデカノキシ−2,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−3,5−ジアミノベンゼン、コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、コレステニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸コレスタニル、3,5−ジアミノ安息香酸コレステニル、3,5−ジアミノ安息香酸ラノスタニル、3,6−ビス(4−アミノベンゾイルオキシ)コレスタン、3,6−ビス(4−アミノフェノキシ)コレスタン、4−(4’−トリフルオロメトキシベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、4−(4’−トリフルオロメチルベンゾイロキシ)シクロヘキシル−3,5−ジアミノベンゾエート、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ブチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェノキシ)メチル)フェニル)−4−ヘプチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−((アミノフェニル)メチル)フェニル)−4−(4−ヘプチルシクロヘキシル)シクロヘキサン、2,4−ジアミノーN,N―ジアリルアニリン、4−アミノベンジルアミン、3−アミノベンジルアミン及び下記式(6)で表されるジアミン化合物等が挙げられる。
【0186】
【化27】

【0187】
上記式(6)中Zaは炭素数1〜3のアルキル基、−O−、−COO−又は−OCO−である。paは0又は1である。qは0〜2の整数である。rは1〜20の整数である。
【0188】
上記式(6)において、C2r+1基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0189】
上記式(6)で表されるジアミン化合物としては、例えば下記式(6−1)〜(6−5)で表される化合物等が挙げられる。
【0190】
【化28】

【0191】
ポリアミック酸の合成反応に供されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合としては、ジアミン化合物に含まれるアミノ基1当量に対して、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基が0.2当量〜2当量が好ましく、0.3当量〜1.2当量がより好ましい。
【0192】
合成反応は、有機溶媒中において行うことが好ましい。反応温度としては、−20℃〜150℃が好ましく、0℃〜100℃がより好ましい。反応時間としては、0.1時間〜24時間が好ましく、0.5時間〜12時間がより好ましい。
【0193】
有機溶媒としては、合成されるポリアミック酸を溶解できるものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミド等の非プロトン系極性溶媒;m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノール等のフェノール系溶媒が挙げられる。
【0194】
有機溶媒の使用量(a)としては、テトラカルボン酸二無水物及びジアミン化合物の総量(b)と有機溶媒の使用量(a)の合計(a+b)に対して、0.1質量%〜50質量%が好ましく、5質量%〜30質量%がより好ましい。
【0195】
反応後に得られるポリアミック酸溶液は、そのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液中に含まれるポリアミック酸を単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく、単離したポリアミック酸を精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。ポリアミック酸の単離方法としては、例えば反応溶液を大量の貧溶媒中に注いで得られる析出物を減圧下乾燥する方法、反応溶液をエバポレーターで減圧留去する方法等が挙げられる。ポリアミック酸の精製方法としては、単離したポリアミック酸を再び有機溶媒に溶解し、貧溶媒で析出させる方法、エバポレーターで有機溶媒等を減圧留去する工程を1回若しくは複数回行う方法が挙げられる。
【0196】
[ポリイミド]
[B]重合体としてのポリイミドは、上記ポリアミック酸の有するアミック酸構造を脱水閉環してイミド化することにより製造できる。
【0197】
ポリイミドは、その前駆体であるポリアミック酸が有しているアミック酸構造の全てを脱水閉環した完全イミド化物であってもよく、アミック酸構造の一部のみを脱水閉環し、アミック酸構造とイミド環構造とが併存している部分イミド化物であってもよい。ポリイミドのイミド化率は、30%以上が好ましく、40%〜80%がより好ましい。なお、ポリイミド中のイミド化率は、ポリイミドの溶液を純水に投入し、得られた沈殿を室温で減圧乾燥した後、重水素化ジメチルスルホキシドに溶解させ、テトラメチルシランを基準物質として室温でH−NMRを測定し、得られたH−NMRスペクトルから、下記式(7)で表される式により求めた。
【0198】
イミド化率(%)={1−(A/A)×α}×100 (7)
【0199】
上記式(7)中、AはNH基のプロトン由来のピーク面積(10ppm)である。Aはその他のプロトン由来のピーク面積である。αはポリアミック酸におけるNH基のプロトン1個に対するその他のプロトンの個数割合である。
【0200】
ポリイミドの合成方法としては、例えば(i)ポリアミック酸を加熱する方法(以下、「方法(i)」と称することがある)、(ii)ポリアミック酸を有機溶媒に溶解し、この溶液中に脱水剤及び脱水閉環触媒を添加し、必要に応じて加熱する方法(以下、「方法(ii)」と称することがある)等のポリアミック酸の脱水閉環反応による方法が挙げられる。
【0201】
方法(i)における反応温度としては、50℃〜200℃が好ましく、60℃〜170℃がより好ましい。反応温度が50℃未満では、脱水閉環反応が十分に進行せず、反応温度が200℃を超えると得られるポリイミドの分子量が低下することがある。反応時間としては、0.5時間〜48時間が好ましく、2時間〜20時間がより好ましい。
【0202】
方法(i)において得られるポリイミドはそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で又は得られるポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。
【0203】
方法(ii)における脱水剤としては、例えば無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸等の酸無水物が挙げられる。
【0204】
脱水剤の含有量としては、所望のイミド化率により適宜選択されるが、ポリアミック酸のアミック酸構造1モルに対して0.01モル〜20モルが好ましい。
【0205】
方法(ii)における脱水閉環触媒としては、例えばピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミン等が挙げられる。
【0206】
脱水閉環触媒の含有量としては、含有する脱水剤1モルに対して0.01モル〜10モルが好ましい。なお、イミド化率は上記脱水剤及び脱水閉環剤の含有量が多いほど高くできる。
【0207】
方法(ii)に用いられる有機溶媒としては、例えばポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒と同様の有機溶媒等が挙げられる。
【0208】
方法(ii)における反応温度としては、0℃〜180℃が好ましく、10℃〜150℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜20時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。反応条件を上記範囲とすることで、脱水閉環反応が十分に進行し、また、得られるポリイミドの分子量を適切なものとできる。
【0209】
方法(ii)においてはポリイミドを含有する反応溶液が得られる。この反応溶液をそのまま液晶配向剤の調製に供してもよく、反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除いたうえで液晶配向剤の調製に供してもよく、ポリイミドを単離した上で液晶配向剤の調製に供してもよく又は単離したポリイミドを精製した上で液晶配向剤の調製に供してもよい。反応溶液から脱水剤及び脱水閉環触媒を除く方法としては、例えば溶媒置換の方法等が挙げられる。ポリイミドの単離方法及び精製方法としては、例えばポリアミック酸の単離方法及び精製方法として例示したものと同様の方法等が挙げられる。
【0210】
<[C]他のポリオルガノシロキサン化合物>
当該液晶配向剤は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物以外にも[C]他のポリオルガノシロキサン化合物をさらに含有することが好ましく、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物としては、上記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンがより好ましい。なお、当該液晶配向剤が[C]他のポリオルガノシロキサン化合物を含む場合、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の大部分は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物とは独立して存在していれば、その一部は特定ポリオルガノシロキサン化合物との縮合物として存在していても良い。
【0211】
上記式(2)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。
【0212】
炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば直鎖状又は分岐状の、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ラウリル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
【0213】
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0214】
炭素数6〜20のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0215】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物のMwとしては、500〜100,000が好ましく、500〜10,000がより好ましい。
【0216】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物は、例えばアルコキシシラン化合物及びハロゲン化シラン化合物からなる群より選択される少なくとも1種のシラン化合物(以下、「原料シラン化合物」と称することがある)を、好ましくは適当な有機溶媒中で、水及び触媒の存在下において加水分解又は加水分解・縮合することにより合成できる。
【0217】
原料シラン化合物としては、例えば
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラクロロシラン等;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、メチルトリ−n−ブトキシシラン、メチルトリ−sec−ブトキシシラン、メチルトリ−tert−ブトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、エチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリ−n−ブトキシシラン、エチルトリ−sec−ブトキシシラン、エチルトリ−tert−ブトキシシラン、エチルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン等;
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン等;
トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルクロロシラン等が挙げられる。
【0218】
これらのうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン又はトリメチルエトキシシランが好ましい。
【0219】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物を合成する際に、任意的に使用できる有機溶媒としては、例えば、アルコール化合物、ケトン化合物、アミド化合物、エステル化合物又はその他の非プロトン性化合物が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0220】
アルコール化合物としては、例えば
メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、i−ペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、ヘプタノール−3、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、2,6−ジメチルヘプタノール−4、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール化合物;
エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ペンタンジオール−2,4、2−メチルペンタンジオール−2,4、ヘキサンジオール−2,5、ヘプタンジオール−2,4、2−エチルヘキサンジオール−1,3、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等の多価アルコール化合物;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノ−2−エチルブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール化合物の部分エーテル等が挙げられることができる。
【0221】
ケトン化合物としては、例えば
アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、ジエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、エチル−n−ブチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジ−i−ブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、2−ヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、フェンチョン等のモノケトン化合物;
アセチルアセトン、2,4−ヘキサンジオン、2,4−ヘプタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、2,4−オクタンジオン、3,5−オクタンジオン、2,4−ノナンジオン、3,5−ノナンジオン、5−メチル−2,4−ヘキサンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロ−2,4−ヘプタンジオン等のβ−ジケトン化合物等が挙げられる。
【0222】
アミド化合物としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N−メチルプロピオンアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホリン、N−ホルミルピペリジン、N−ホルミルピロリジン、N−アセチルモルホリン、N−アセチルピペリジン、N−アセチルピロリジン等が挙げられる。
【0223】
エステル化合物としては、例えばジエチルカーボネート、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、酢酸メチル、酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸n−ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリグリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸i−アミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、マロン酸ジエチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル等が挙げられる。
【0224】
その他の非プロトン性化合物としては、例えばアセトニトリル、ジメチルスルホキシド、N,N,N’,N’−テトラエチルスルファミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチルモルホロン、N−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチル−Δ3−ピロリン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メチルイミダゾール、N−メチル−4−ピペリドン、N−メチル−2−ピペリドン、NMP、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジメチルテトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン等が挙げられる。
【0225】
これら溶媒のうち、多価アルコール化合物、多価アルコール化合物の部分エーテル及びエステル化合物が好ましい。
【0226】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の合成に際して使用する水の量としては、原料シラン化合物の有するアルコキシ基及びハロゲン原子の合計1モルに対して、0.5モル〜100モルが好ましく、1モル〜30モルがより好ましく、1モル〜1.5モルが特に好ましい。
【0227】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の合成に際して使用できる触媒としては、例えば金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、アンモニア等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上組合せて使用できる。
【0228】
金属キレート化合物としては、例えば
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタン等のチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−i−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−t−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−t−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−i−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−t−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等のジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等のアルミニウムキレート化合物等が挙げられる。
【0229】
有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0230】
無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸等が挙げられる。
【0231】
有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等が挙げられる。
【0232】
アルカリ金属化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0233】
アルカリ土類金属化合物としては、例えば水酸化バリウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。
【0234】
これらのうち、金属キレート化合物、有機酸及び無機酸が好ましく、チタンキレート化合物及び有機酸がより好ましい。
【0235】
触媒の使用量としては、原料シラン化合物100質量部に対して0.001質量部〜10質量部が好ましく、0.001質量部〜1質量部がより好ましい。
【0236】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の合成に際して添加される水は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に、断続的又は連続的に添加できる。触媒は、原料であるシラン化合物中又はシラン化合物を有機溶媒に溶解した溶液中に予め添加しておいてもよく、添加される水中に溶解又は分散させておいてもよい。
【0237】
[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の合成の際の反応温度としては、0℃〜100℃が好ましく、15℃〜80℃がより好ましい。反応時間としては、0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜8時間がより好ましい。
【0238】
[他の重合体の含有割合]
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有する場合、他の重合体の含有割合としては、他の重合体の種類により異なるが、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して10,000質量部以下が好ましい。
【0239】
当該液晶配向剤が、[B]重合体を含有する場合、ポリアミック酸及びポリイミドの合計量の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して200質量部〜5,000質量部が好ましい。
【0240】
当該液晶配向剤が、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物を含有する場合、[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の含有割合としては、ポリオルガノシロキサン100質量部に対して100質量部〜2,000質量部が好ましい。
【0241】
当該液晶配向剤が、他の重合体を含有する場合、他の重合体の種類としては、[B]重合体又は[C]他のポリオルガノシロキサン化合物が好ましく、[B]重合体がより好ましい。
【0242】
<任意成分>
任意成分としては、例えば硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、分子内に少なくとも一つのエポキシ基を有する化合物(以下、「エポキシ化合物」と称することがある。)、官能性シラン化合物、界面活性剤等が挙げられる。以下、これらの任意成分について詳述する。
【0243】
[硬化剤、硬化触媒及び硬化促進剤]
硬化剤及び硬化触媒は、[A]ポリオルガノシロキサン化合物の架橋反応をより強固にする目的で当該液晶配向剤に含有できる。また、上記硬化促進剤は、硬化剤の司る硬化反応を促進する目的で当該液晶配向剤に含有できる。
【0244】
硬化剤としては、エポキシ基を有する硬化性化合物又はエポキシ基を有する化合物を含有する硬化性組成物の硬化用として一般に用いられている硬化剤を用いることができ、例えば多価アミン、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸等が挙げられる。
【0245】
多価カルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサントリカルボン酸の無水物及びその他の多価カルボン酸無水物等が挙げられる。シクロヘキサントリカルボン酸無水物としては、例えばシクロヘキサン−1,2,4−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロヘキサン−1,3,4−トリカルボン酸−3,4−無水物、シクロヘキサン−1,3,5−トリカルボン酸−3,5−無水物、シクロヘキサン−1,2,3−トリカルボン酸−2,3−酸無水物等が挙げられる。
【0246】
その他の多価カルボン酸無水物としては、例えば4−メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、無水こはく酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸及びポリアミック酸の合成に一般に用いられるテトラカルボン酸二無水物のほか、α−テルピネン、アロオシメン等の共役二重結合を有する脂環式化合物と無水マレイン酸とのディールス・アルダー反応生成物及びこれらの水素添加物等が挙げられる。
【0247】
硬化剤の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、100質量部以下が好ましい。
【0248】
硬化触媒としては、例えば6フッ化アンチモン化合物、6フッ化リン化合物、アルミニウムトリスアセチルアセトナート等が挙げられる。硬化触媒の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、2質量部以下が好ましい。
【0249】
硬化促進剤としては、例えば
イミダゾール化合物;
4級リン化合物;
4級アミン化合物;
1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7やその有機酸塩の如きジアザビシクロアルケン;
オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、アルミニウムアセチルアセトン錯体の如き有機金属化合物;
三フッ化ホウ素、ホウ酸トリフェニルの如きホウ素化合物;塩化亜鉛、塩化第二錫の如き金属ハロゲン化合物;
ジシアンジアミド、アミンとエポキシ樹脂との付加物の如きアミン付加型促進剤等の高融点分散型潜在性硬化促進剤;
4級フォスフォニウム塩等の表面をポリマーで被覆したマイクロカプセル型潜在性硬化促進剤;
アミン塩型潜在性硬化促進剤;
ルイス酸塩、ブレンステッド酸塩の如き高温解離型の熱カチオン重合型潜在性硬化促進剤等が挙げられる。
【0250】
硬化促進剤の使用割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。
【0251】
[エポキシ化合物]
エポキシ化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性をより向上する目的で当該液晶配向剤に含有できる。
【0252】
エポキシ化合物としては、例えばエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、N,N−ジグリシジル−ベンジルアミン、N,N−ジグリシジル−アミノメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0253】
エポキシ化合物の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意に含有される他の重合体との合計100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、0.1質量部〜30質量部がより好ましい。なお、当該液晶配向剤がエポキシ化合物を含有する場合、架橋反応を効率良く起こす目的で、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール等の塩基触媒を併用してもよい。
【0254】
[官能性シラン化合物]
上記官能性シラン化合物は、形成される液晶配向膜の基板表面に対する接着性を向上する目的で使用できる。
【0255】
官能性シラン化合物としては、例えば3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシジロキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等のほか、特開昭63−291922号公報に記載されている、テトラカルボン酸二無水物とアミノ基を有するシラン化合物との反応物等が挙げられる。
【0256】
官能性シラン化合物の含有割合としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物と任意に含有される他の重合体との合計100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0257】
[界面活性剤]
界面活性剤としては、例えばノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、シリコーン界面活性剤、ポリアルキレンオキシド界面活性剤、含フッ素界面活性剤等が挙げられる。
【0258】
界面活性剤の使用割合としては、当該液晶配向剤の全体100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0259】
<液晶配向剤の調製方法>
当該液晶配向剤は、上述の通り、[A]ポリオルガノシロキサン化合物を必須成分として含有し、必要に応じて他の成分を含有するものであるが、好ましくは各成分が有機溶媒に溶解された溶液状の組成物として調製される。
【0260】
有機溶媒としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物及び任意に使用される他の成分を溶解し、これらと反応しないものが好ましい。当該液晶配向剤に好ましく使用できる有機溶媒としては、任意に含有される他の重合体の種類により異なる。
【0261】
当該液晶配向剤が[A]ポリオルガノシロキサン化合物と、[B]重合体を含有するものである場合における好ましい有機溶剤としては、ポリアミック酸の合成に用いられるものとして例示した有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0262】
一方、当該液晶配向剤が重合体として[A]ポリオルガノシロキサン化合物のみを含有する場合又は[A]ポリオルガノシロキサン化合物及び[C]他のポリオルガノシロキサン化合物を含有する場合における好ましい有機溶剤としては、例えば1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレンブリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、メチルカルビトール、エチルカルビトール、プロピルカルビトール、ブチルカルビトール、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸n−ヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸オクチル、酢酸アミル、酢酸イソアミル等が挙げられる。この中で好ましくは、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル等が挙げられる。
【0263】
当該液晶配向剤の調製に用いられる好ましい溶媒は、他の重合体の使用の有無及びその種類に従い、上記した有機溶媒の1種又は2種以上を組み合わせて得られる。このような溶媒は、下記の好ましい固形分濃度において液晶配向剤に含有される各成分が析出せず、且つ液晶配向剤の表面張力が25mN/m〜40mN/mの範囲となるものである。
【0264】
本発明の液晶配向剤の固形分濃度、すなわち液晶配向剤中の溶媒以外の全成分の質量が液晶配向剤の全質量に占める割合は、粘性、揮発性等を考慮して選択されるが、好ましくは1質量%〜10質量%である。固形分濃度が1質量%未満では、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜の膜厚が過小となって良好な液晶配向膜が得られない場合がある。一方、固形分濃度が10質量%を超えると、塗膜の膜厚が過大となって良好な液晶配向膜を得られない場合があり、また、液晶配向剤の粘性が増大して塗布特性が不足する場合がある。好ましい固形分濃度の範囲は、基板に液晶配向剤を塗布する際に採用する方法によって異なる。例えばスピンナー法による場合の固形分濃度の範囲としては、1.5質量%〜4.5質量%が好ましい。印刷法による場合、固形分濃度を3質量%〜9質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を12mPa・s〜50mPa・sの範囲とすることが好ましい。インクジェット法による場合、固形分濃度を1質量%〜5質量%の範囲とし、それによって溶液粘度を3mPa・s〜15mPa・sの範囲とすることが好ましい。
【0265】
当該液晶配向剤を調製する際の温度は、好ましくは、0℃〜200℃、より好ましくは10℃〜60℃である。
<液晶配向膜及びその形成方法>
【0266】
当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜も本発明に好適に含まれる。当該液晶配向剤を用いて液晶配向膜を形成する方法としては、[A]ポリオルガノシロキサン化合物において、[B]液晶配向能を有する構造が上記式(B−1)で表される構造単位を有さない場合(以下、この場合の形成方法を「形成方法(i)」と称する)、液晶配向能を有する構造が上記式(B−1)で表される構造単位を有する場合(以下、この場合の形成方法を「形成方法(ii)」と称する)により異なる。以下、形成方法(i)及び(ii)について詳述する。
【0267】
[形成方法(i)]
まず、パターニングされた透明導電膜が設けられている基板2枚を一対として、その各透明性導電膜形成面上に、当該液晶配向剤を、例えばロールコーター法、スピンナー法、印刷法、インクジェット法等の適宜の塗布方法により塗布する。次に、塗布面を、予備加熱(プレベーク)し、次いで焼成(ポストベーク)により塗膜を形成する。プレベーク条件としては、例えば40℃〜120℃において0.1分〜5分である。ポストベーク条件としては、120℃〜300℃が好ましく、150℃〜250℃より好ましく、5分〜200分が好ましく、10分〜100分がより好ましい。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
【0268】
上記基板としては、例えばフロートガラス、ソーダガラス等のガラス基材、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート等のプラスチック基材を含む透明基板等が挙げられる。
【0269】
透明導電膜としては、SnOを含むNESA膜、In−SnOを含むITO膜等が挙げられる。これらの透明導電膜のパターニング方法としては、例えばフォト・エッチング法や透明導電膜を形成する際にマスクを用いる方法等が挙げられる。
【0270】
液晶配向剤の塗布に際しては、基板又は透明導電膜と塗膜との接着性をさらに良好にするために、基板及び透明導電膜上に、予め官能性シラン化合物、チタネート化合物等を塗布しておいてもよい。
【0271】
当該液晶配向剤を垂直配向型液晶表示素子用の液晶配向膜の形成に用いる場合、上記のようにして形成された塗膜は、そのまま垂直配向型液晶表示素子用の液晶配向膜として用いることができるが、この塗膜面に対して任意的にラビング処理を施してもよい。一方、本発明の液晶配向剤を水平配向型液晶表示素子用の液晶配向膜の形成に用いる場合には、上記のようにして形成された塗膜にラビング処理を施すことにより液晶配向膜とできる。
【0272】
上記ラビング処理は、例えばナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦ることにより行われる。この場合、形成された液晶配向膜に対し、例えば特開平6−222366号公報、特開平6−281937号公報等に記載されているように、液晶配向膜の一部に紫外線を照射することによってプレチルト角を変化させる処理を施してもよく又は特開平5−107544号公報に記載されているように、形成された液晶配向膜表面の一部にレジスト膜を形成したうえで先のラビング処理と異なる方向にラビング処理を行った後にレジスト膜を除去し、液晶配向膜が領域ごとに異なる液晶配向能を持つようにする処理を施すことによって、得られる水平型液晶表示素子の視界特性を改善してもよい。
【0273】
[形成方法(ii)]
本発明に含まれる液晶配向膜の形成方法(ii)は、
(1)[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、上記式(B−1)で表される構造単位を有する液晶配向能を有する構造を含む液晶配向剤を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程及び
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
を含む。当該液晶配向剤を用いる本発明の形成方法により、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜を形成できる。
【0274】
上記(1)塗膜形成工程としては、形成方法(i)において説明した塗膜形成工程と同様の工程が適用できる。
【0275】
形成方法(ii)においては、形成方法(i)において説明したラビング処理の代わりに、(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程により、液晶配向膜を製造できる。
【0276】
放射線としては、直線偏光若しくは部分偏光された放射線又は無偏光の放射線を使用することができ、例えば150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線及び可視光線が挙げられるが、300nm〜400nmの波長の光を含む紫外線が好ましい。用いる放射線が直線偏光又は部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。無偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
【0277】
使用する光源としては、例えば低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、重水素ランプ、メタルハライドランプ、アルゴン共鳴ランプ、キセノンランプ、エキシマーレーザー等が挙げられる。上記の好ましい波長領域の紫外線は、上記光源を、例えばフィルター、回折格子等と併用する手段等により得られる。
【0278】
放射線の照射量としては、1J/m以上10,000J/m未満が好ましく、10J/m〜3,000J/mがより好ましい。なお、従来知られている液晶配向剤から形成される塗膜に光配向法により液晶配向能を付与する場合、10,000J/m以上の放射線照射量が必要であるところ、当該液晶配向剤を用いると、光配向法の際の放射線照射量が3,000J/m以下、さらに1,000J/m以下、特に500J/m以下であっても良好な液晶配向能を付与でき液晶表示素子の製造コストの削減に資する。
【0279】
<液晶表示素子>
当該液晶配向膜を備える液晶表示素子も本発明に好適に含まれる。従って、当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。
【0280】
<液晶表示素子の製造方法>
当該液晶表示素子は、例えば以下のようにして製造できる。
【0281】
第一の方法としては、従来から知られている方法であって、まず、それぞれの液晶配向膜が対向するように間隙(セルギャップ)を介して2枚の基板を対向配置し、2枚の基板の周辺部についてシール剤を用いて貼り合わせ、基板表面及びシール剤により区画されたセルギャップ内に液晶を注入充填した後、注入孔を封止することにより液晶セルを製造できる。
【0282】
第二の方法としては、ODF(One Drop Fill)方式と呼ばれる手法であって、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に、例えば紫外光硬化性のシール材を塗布し、さらに液晶配向膜面上に液晶を滴下した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化することにより、液晶セルを製造できる。
【0283】
いずれの方法による場合でも、次いで、液晶セルを、用いた液晶が等方相をとる温度まで加熱した後、室温まで徐冷することにより、液晶充填時の流動配向を除去することが望ましい。そして、液晶セルの外側表面に偏光板を貼り合わせることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。
【0284】
シール剤としては、例えば,スペーサーとしての酸化アルミニウム球及び硬化剤を含有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0285】
上記液晶としては、例えばネマティック型液晶、スメクティック型液晶等が挙げられる。TN型液晶セル又はSTN型液晶セルの場合、正の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては、例えばビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶、エステル系液晶、ターフェニル系液晶、ビフェニルシクロヘキサン系液晶、ピリミジン系液晶、ジオキサン系液晶、ビシクロオクタン系液晶、キュバン系液晶等が挙げられる。また上記液晶に、例えばコレステリルクロライド、コレステリルノナエート、コレステリルカーボネート等のコレステリック液晶(メルク社、「C−15」、「CB−15」)として販売されているようなカイラル剤;p−デシロキシベンジリデン−p−アミノ−2−メチルブチルシンナメート等の強誘電性液晶等を、さらに添加して使用できる。
【0286】
一方、垂直配向型液晶セルの場合には、負の誘電異方性を有するネマティック型液晶が好ましい。このような液晶としては、例えばジシアノベンゼン系液晶、ピリダジン系液晶、シッフベース系液晶、アゾキシ系液晶、ビフェニル系液晶、フェニルシクロヘキサン系液晶等が挙げられる。
【0287】
液晶セルの外側に使用される偏光板としては、ポリビニルアルコールを延伸配向させながらヨウ素を吸収させた「H膜」と呼ばれる偏光膜を酢酸セルロース保護膜で挟んだ偏光板又はH膜そのものからなる偏光板等が挙げられる。
【実施例】
【0288】
以下、実施例に基づき本発明を詳述するが、この実施例の記載に基づいて本発明が限定的に解釈されるものではない。
【0289】
なお、以下の実施例において用いた原料化合物及び重合体の必要量は、下記の合成例に示す合成スケールでの原料化合物及び重合体の合成を必要に応じて繰り返すことにより確保した。エポキシ当量は、JIS C2105の「塩酸−メチルエチルケトン法」に準じて測定した。溶液粘度(mPa・s)は、各合成例における重合体溶液の重合体濃度を10質量%に調整した溶液について、E型回転粘度計を用いて25℃で測定した。
【0290】
<エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンの合成>
[合成例1]
撹拌機、温度計、滴下漏斗及び還流冷却管を備えた反応容器に、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン100.0g、メチルイソブチルケトン500g及びトリエチルアミン10.0gを仕込み、室温で混合した。次いで、脱イオン水100gを滴下漏斗より30分かけて滴下した後、還流下で混合しつつ、80℃で6時間反応させた。反応終了後、有機層を取り出し、0.2質量%硝酸アンモニウム水溶液により洗浄後の水が中性になるまで洗浄したのち、減圧下で溶媒及び水を留去することにより、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサン(EPS−1)を粘稠な透明液体として得た。
【0291】
(EPS−1)について、H−NMR分析を行なったところ、化学シフト(δ)=3.2ppm付近にエポキシ基に基づくピークが理論強度どおりに得られ、反応中にエポキシ基の副反応が起こっていないことが確認された。(EPS−1)のMwは2,200であり、エポキシ当量は186g/モルであった。
【0292】
<化合物(A−1−1)の合成>
[合成例2]
下記スキームに従い、化合物(A−1−1)を合成した。
【0293】
【化29】

【0294】
500mLのナス型フラスコに、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン23.6g、コハク酸無水物15.0g、ピリジン200mLを仕込み、80℃で9時間攪拌し反応を行った。反応終了後、室温で1日静置し結晶を析出させ、溶媒を除去し、化合物(A−1−1)の白色結晶を37.1g得た。
【0295】
<液晶配向能を有する化合物の合成>
[合成例3]
下記スキームに従い、化合物(b−1)を合成した。
【0296】
【化30】

【0297】
1Lのナス型フラスコに、p−ヒドロキシ桂皮酸82g、炭酸カリウム304g及びN−メチル−2−ピロリドン400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン166gを加えて100℃で5時間撹拌した。その後、減圧にて溶剤を留去した。ここに、水酸化ナトリウム48g及び水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、反応系を塩酸で中和し、生じた沈殿を回収してエタノールで再結晶することにより、化合物(b−1)の白色結晶を80g得た。
【0298】
[合成例4]
下記スキームに従い、化合物(b−2)を合成した。
【0299】
【化31】

【0300】
1Lのナス型フラスコに、4−ヒドロキシ安息香酸メチル91.3g、炭酸カリウム182.4g及びN−メチル−2−ピロリドン320mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、1−ブロモペンタン99.7gを加え100℃で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム48g及び水400mLを加えて3時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(b−2’)の白色結晶(104g)を得た。化合物(b−2’)104gを反応容器にとり、これに塩化チオニル1L及びN,N−ジメチルホルムアミド770μLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の5L三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸74g、炭酸カリウム138g、テトラブチルアンモニウム4.8g、テトラヒドロフラン500mL及び水1Lを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記化合物(b−2’)と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(b−2)の白色結晶を90g得た。
【0301】
[合成例5]
下記スキームに従い、化合物(b−3)を合成した。
【0302】
【化32】

【0303】
1Lのナス型フラスコに4−ヒドロキシ安息香酸メチル82g、炭酸カリウム166g及びN,N−ジメチルアセトアミド400mLを仕込み、室温で1時間撹拌を行った後、4,4,4−トリフルオロ−1−ヨードブタン95gを加え室温で5時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、水で再沈殿を行った。次に、この沈殿に水酸化ナトリウム32g及び水400mLを加えて4時間還流して加水分解反応を行った。反応終了後、塩酸で中和し、生じた沈殿をエタノールで再結晶することにより化合物(b−3’)の白色結晶を80g得た。化合物(b−3’)のうちの46.4gを反応容器にとり、これに塩化チオニル200mL及びN,N−ジメチルホルムアミド0.2mLを加えて80℃で1時間撹拌した。次に、減圧下で塩化チオニルを留去し、塩化メチレンを加えて炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、テトラヒドロフランを加えて溶液とした。次に、上記とは別の2L三口フラスコに4−ヒドロキシ桂皮酸36g、炭酸カリウム55g、テトラブチルアンモニウム2.4g、テトラヒドロフラン200mL及び水400mLを仕込んだ。この水溶液を氷冷し、上記の化合物(b−3’)と塩化チオニルとの反応物を含有するテトラヒドロフラン溶液をゆっくり滴下し、さらに2時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物に塩酸を加えて中和し、酢酸エチルで抽出した後、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮を行った後、エタノールで再結晶することにより、化合物(b−3)の白色結晶を39g得た。
【0304】
[合成例6]
下記スキームに従い、化合物(b−4)を合成した。
【0305】
【化33】

【0306】
上記合成例4において、化合物(b−2’)の代わりに4−ペンチル−トランスシクロヘキシルカルボン酸9.91gを用いた以外は、合成例4と同様に操作することにより、化合物(b−4)の白色結晶を13g得た。
【0307】
[合成例7]
下記スキームに従い、化合物(b−5)を合成した。
【0308】
【化34】

【0309】
還流管、温度計及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、化合物(b−5’)31g、酢酸パラジウム0.23g、トリ(o−トリル)ホスフィン1.2g、トリエチルアミン56mL、アクリル酸8.2mL及びN,N−ジメチルアセトアミド200mLを仕込んで120℃において3時間撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応液をろ過して得られたろ液に酢酸エチルを1L加えて得た有機層につき、希塩酸で2回及び水で3回、順次に分液洗浄を行った。その後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮、乾固した後、酢酸エチル及びテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶することにより、化合物(b−5)の結晶を15g得た。
【0310】
[合成例8]
下記スキームに従い、化合物(b−6)を合成した。
【0311】
【化35】

【0312】
化合物(b−5’)の代わりに化合物(b−6’)を36g用いた以外は、上記合成例7と同様に操作することにより、化合物(b−6)を16g得た。
【0313】
[合成例9]
下記スキームに従い、化合物(b−7)を合成した。
【0314】
【化36】

【0315】
還流管を備えた200mLのナスフラスコに、デシルこはく酸無水物12g、4−アミノ桂皮酸8.2g及び酢酸100mLを仕込み、2時間還流下に反応を行なった。反応終了後、反応混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、シリカカラムで精製を行い、さらにエタノール及びテトラヒドロフランの混合溶剤で再結晶を行うことにより、化合物(b−7)の白色結晶(純度98.0%)を10g得た。
【0316】
[合成例10]
上記合成例7において、化合物(b−5’)の代わりに下記式で表される化合物(b−8’)28gを用いた以外は合成例7と同様に操作して、下記式で表される化合物(b−8)の結晶を14g得た。
【0317】
【化37】

【0318】
[合成例11]
下記スキームに従い、化合物(b−9)を合成した。
【0319】
【化38】

【0320】
還流管及び窒素導入管を備えた500mLの三口フラスコに、β−コレスタノール39g、こはく酸無水物20g、N,N−ジメチルアミノピリジン1.5g、酢酸エチル200mL及びトリエチルアミン17mLを仕込み、8時間還流下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にテトラヒドロフラン200mLを加えて得た有機層につき、1N塩酸水で2回及び水で3回、順次に洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した後、減圧下に溶媒を除去して得た固体を酢酸エチルから再結晶することにより、化合物(b−9)の白色結晶を38g得た。
【0321】
<[A]ポリオルガノシロキサン化合物の合成>
[合成例12]
200mLの三口フラスコに、(EPS−1)を10.0g、メチルイソブチルケトン69.5g、化合物(A−1−1)を2.77g(ポリオルガノシロキサンEPS−1の有するエポキシ基に対して20モル%に相当)、ステアリン酸を4.60g(ポリオルガノシロキサン(EPS−1)の有するエポキシ基に対して30モル%に相当)及びテトラブチルアンモニウムブロミドを1.00g仕込み、100℃で8時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、溶液を水で5回洗浄した後、溶媒を留去することにより[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S−1)を白色粉末として15.8g得た。
【0322】
[合成例13〜合成例33]
配合する化合物の種類と配合量を、それぞれ表1に示す通りとし、合成例12と同様に操作して、[A]ポリオルガノシロキサン化合物(S−2)〜(S−22)を合成した。なお、表1における化合物の使用割合は、(EPS−1)の有するエポキシ基に対するモル%である。また、ポリオルガノシロキサン(S−1)〜(S−22)のMwについてもあわせて表1に示す。なお、サリチル酸、4−ジエチルアミノ安息香酸の構造をそれぞれ順に下記に示す。
【0323】
【化39】

【0324】
【化40】

【0325】
[比較合成例1]
200mLの三口フラスコに、(EPS−1)を10.0g、メチルイソブチルケトン58.4g、ステアリン酸を4.60g(ポリオルガノシロキサンEPS−1の有するエポキシ基に対して30モル%に相当)及びテトラブチルアンモニウムブロミドを1.00g仕込み、100℃で8時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、メタノールで再沈殿を行い、沈殿物を酢酸エチルに溶解して溶液を得、該溶液を水で5回洗浄した後、溶媒を留去することによりポリオルガノシロキサン(CS−1)の白色粉末12.4gを得た。
【0326】
[比較合成例2〜4]
配合する化合物の種類と配合量を、それぞれ表1に示す通りとし、比較合成例1と同様に操作してポリオルガノシロキサン(CS−2)〜(CS−4)を合成した。また、ポリオルガノシロキサン(CS−1)〜(CS−4)のMwについてもあわせて表1に示す。
【0327】
【表1】

【0328】
<[B]重合体(ポリアミック酸)の合成>
[合成例34]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物196g(1.0モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル212g(1.0モル)をNMP4,050gに溶解させ、40℃で3時間反応させて、固形分濃度10%、溶液粘度170mPa・sのポリアミック酸溶液(PA−1)を得た。
【0329】
[合成例35]
テトラカルボン酸二無水物として1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物86.3g(0.44モル)及びピロメリット酸二無水物96.0g(0.44モル)、ジアミンとして2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル191.0g(0.90モル)をNMP1,490gに溶解させ、40℃で4時間反応させた後、NMPをさらに加え、固形分濃度10%、溶液粘度43mPa・sのポリアミック酸溶液(PA−2)を得た。
【0330】
<[B]重合体(ポリイミド)の合成>
[合成例36]
テトラカルボン酸二無水物として、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20.9g(0.093モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン9.2g(0.085モル)及び下記式(DA)で表される化合物4.9g(0.009モル)を、NMP140gに溶解し、60℃で4時間反応させ、得られたポリアミック酸溶液を少量分取し、NMPを加えて、固形分濃度10%、溶液粘度126mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP325gを追加し、ピリジン7.4g及び無水酢酸9.5gを添加し110℃で4時間脱水閉環を行なった。脱水閉環反応後、系内の溶媒を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約54%のポリイミド(PI−1)を16.1重量%含有する溶液約210gを得た。このポリイミド溶液を少量分取し、NMPを加えて固形分濃度10%とし測定したところ、溶液粘度75mPa・sであった。
【0331】
【化41】

【0332】
[合成例37]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物20.0g(0.089モル)、ジアミンとしてp−フェニレンジアミン6.8g(0.063モル)、4,4’−ジアミノジフェニルメタン3.6g(0.018モル)及び上記式(DA)で表される化合物4.7g(0.0090モル)をNMP140gに溶解し、60℃で4時間反応させ、固形分濃度20%、溶液粘度2,200mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP325gを追加し、ピリジン10.5g及び無水酢酸13.6gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約65%のポリイミド(PI−2)溶液(固形分濃度20%)、約160gを得た。
【0333】
[合成例38]
テトラカルボン酸二無水物として2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物19.2g(0.086モル)、ジアミンとして3,5−ジアミノ安息香酸5.2g(0.034モル)及び下記式で表されるジアミン25.5g(0.052モル)をNMP200gに溶解し、60℃で4時間反応させ、固形分濃度20%、溶液粘度1,450mPa・sのポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液にNMP250gを追加し、ピリジン10.2g及び無水酢酸13.2gを添加して110℃で4時間脱水閉環反応を行った。脱水閉環反応後、系内の溶液を新たなNMPで溶媒置換することにより、イミド化率約67%のポリイミド(PI−3)を20重量%含有する溶液約230gを得た。
【0334】
【化42】

【0335】
<[C]他のポリオルガノシロキサン化合物の合成>
[合成例39]
冷却管を備えた200mLの三口フラスコに、テトラエトキシシラン20.8g及び1−エトキシ−2−プロパノール28.2gを仕込み、60℃に加熱して攪拌した。ここに、容量20mLの別のフラスコに調製した無水マレイン酸0.26gを水10.8gに溶解した無水マレイン酸水溶液を加え、60℃においてさらに4時間攪拌下に反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物から溶媒を留去し、残存物に1−エトキシ−2−プロパノールを加えて、再度濃縮することにより、固形分濃度10%のポリオルガノシロキサン(PS−1)溶液を得た。Mwは5,100であった。
【0336】
<液晶配向剤の調製>
[実施例1]
ポリオルガノシロキサン(S−1)100質量部と、ポリアミック酸(PA−1)を含有する溶液の、ポリアミック酸(PA−1)に換算して1,000質量部に相当する量とを合わせ、これにNMP及びエチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテルを加え、溶媒組成がNMP:エチレングリコール−モノ−n−ブチルエーテル=50:50(質量比)、固形分濃度が3.0質量%の溶液とした。この溶液を孔径1μmのフィルターで濾過することにより、液晶配向剤(AF−1)を調製し、実施例1とした。
【0337】
[実施例2〜39及び比較例1〜7]
配合する化合物の種類と使用量を、それぞれ後述する表2に示す通りとし、実施例1と同様に操作して、液晶配向剤(AF−2)〜(AF−39)及び(CAF−1)〜(CAF−7)を調製し、これらを実施例2〜39、比較例1〜7とした。
【0338】
<保存安定性>
上記各液晶配合剤について、下記の(方法1)又は(方法2)に従い、保存安定性を評価した。結果を表2に示す。
【0339】
(方法1)
ガラス基板上に、スピンコート法により回転数を変量として液晶配向剤(AF−1)〜(AF−12)及び(CAF−1)〜(CAF−3)を塗布し、次いで200℃で60分加熱することにより塗膜を形成し、溶媒除去後の塗膜の膜厚が1,000Åとなる回転数を調べた。次に、上記液晶配向剤の一部をとり、これを−15℃にて5週間保存した。保存後の液晶配向剤を目視で観察し、不溶物の析出が観察された場合には保存安定性「不良」と判定した。5週間保存後に不溶物が観察されなかった場合には、さらにガラス基板上に、保存後の液晶配向剤を用いて保存前に膜厚が1,000Åとなった回転数のスピンコート法により塗布し、次いで200℃で60分加熱することにより塗膜を形成し、溶媒除去後の膜厚を測定した。この膜厚が、1,000Åから10%以上変化していた場合には保存安定性「不良」と判定し、膜厚の変化が10%未満であった場合を保存安定性「良」と判定した。なお、上記塗膜の膜厚の測定は、KLA−Tencor社製の蝕針式段差膜厚計を用いて行なった。
【0340】
(方法2)
液晶配向剤(AF−13)〜(AF−39)及び(CAF−4)〜(CAF−7)を−15℃で6か月間保管した。保管の前及び後に25℃においてE型粘度計により粘度を測定した。溶液粘度の保管前後の変化率が10%未満であった場合を保存安定性「良」、10%以上であった場合を保存安定性「不良」として評価した。
【0341】
【表2】

【0342】
<液晶表示素子の製造>
[実施例40]
液晶配向剤(AF−1)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。この操作を繰り返し、液晶配向膜を有する基板を一対(2枚)作成した。上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、一対の基板の液晶配向膜面を重ね合わせて圧着し、150℃で1時間加熱して接着剤を熱硬化した。次いで、液晶注入口より基板の間隙に、ネガ型液晶(メルク社、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止し、さらに液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で10分間加熱した後に室温まで徐冷した。さらに基板の外側両面に、偏光板を2枚の偏光板の偏光方向が互いに直交するように貼り合わせることにより、垂直配向型の液晶表示素子を製造し、これを実施例40とした。
【0343】
[実施例41〜51、比較例7〜9]
液晶配向剤(AF−2)〜(AF−12)及び(CAF−1)〜(CAF−3)を用い、実施例40と同様に操作して、液晶表示素子を製造し、これを実施例41〜51、比較例7〜9とした。
【0344】
[実施例52]
液晶配向剤(AF−13)を、ITO膜からなる透明電極付きガラス基板の透明電極面上に、スピンナーを用いて塗布し、80℃のホットプレートで1分間プレベークを行った後、窒素置換したオーブン中、200℃で1時間加熱して溶媒を除去することにより、膜厚0.1μmの塗膜を形成した。次いでこの塗膜表面に、Hg−Xeランプ及びグランテーラープリズムを用いて313nmの輝線を含む偏光紫外線200J/mを、基板法線から40°傾いた方向から照射して液晶配向膜とした。同じ操作を繰り返して、液晶配向膜を有する基板を1対(2枚)作成した。上記基板のうちの1枚の液晶配向膜を有する面の外周に直径5.5μmの酸化アルミニウム球入りエポキシ樹脂接着剤をスクリーン印刷により塗布した後、1対の基板の液晶配向膜面を対向させ、各基板の紫外線の光軸の基板面への投影方向が逆平行となるように圧着し、150℃で1時間かけて接着剤を熱硬化させた。次いで、液晶注入口より基板間の間隙に、ネガ型液晶(メルク社、MLC−6608)を充填した後、エポキシ系接着剤で液晶注入口を封止した。さらに、液晶注入時の流動配向を除くために、これを150℃で加熱してから室温まで徐冷した。次に基板の外側両面に、偏光板をその偏光方向が互いに直交し、且つ、液晶配向膜の紫外線の光軸の基板面への射影方向と45°の角度をなすように貼り合わせることにより垂直配向型の液晶表示素子を製造し、これを実施例52とした。
【0345】
[実施例53〜78、比較例10〜13]
液晶配向剤(AF−13)〜(AF−39)及び(CAF−4)〜(CAF−7)を用い、実施例52と同様に操作して、液晶表示素子を製造し、これを実施例53〜78、比較例10〜13とした。
【0346】
実施例40〜78及び比較例7〜13の液晶表示素子について、以下の評価をした。結果を表3に示す。
【0347】
<液晶配向性>
上記で製造した液晶表示素子に5Vの電圧をON・OFF(印加・解除)したときの明暗の変化における異常ドメインの有無を目視により観察した。電圧OFF時にセルから光漏れが観察されず、かつ電圧印加時にセル駆動領域が白表示、それ以外の領域から光漏れがない場合を液晶配向性「良」とした。電圧OFF時にセルから光漏れが観察されるか又は電圧ON時にセル駆動領域以外の領域から光漏れが観察された場合を液晶配向性「不良」とした。
【0348】
<電圧保持率>
上記で製造した液晶表示素子に60℃の環境温度で5Vの電圧を60マイクロ秒の印加時間、167ミリ秒のスパンで印加した後、印加解除から167ミリ秒後の電圧保持率を測定した。測定装置は東陽テクニカ社、VHR−1を使用した。電圧保持率が97%以上の場合を電圧保持率「良」として評価した。
【0349】
<耐光性>
上記で製造した液晶表示素子に電圧保持率の評価と同様の条件で初期の電圧保持率を測定した。その後、100ワット型白色蛍光灯下5cmの距離に配置し、500時間光を照射してから再度上記と同条件で電圧保持率を測定した。初期値と比較した電圧保持率の低下率が1%以下であった場合を耐光性「A」、1%を超えて2%以下であった場合を「B」、2%を超えた場合を耐光性「C」とした。
【0350】
【表3】

【0351】
表2及び3の結果から明らかなように、本発明の液晶配向剤は保存安定性に優れることがわかった。また、当該液晶配向剤から形成した液晶配向膜は、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性を十分に満足することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0352】
本発明によれば、液晶表示素子として実用面で要求される液晶配向性、電圧保持率及び耐光性等の特性を十分に満足する液晶配向膜、この液晶配向膜の形成方法、液晶配向膜の形成材料として好適な保存安定性に優れ、かつ光配向法を採用し液晶配向膜を形成可能な液晶配向剤及び液晶配向膜を備える液晶表示素子を提供できる。当該液晶配向剤から形成される液晶配向膜を備える本願の液晶表示素子は、例えば時計、携帯型ゲーム、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、携帯情報端末、デジタルカメラ、携帯電話、各種モニター、液晶テレビ等の表示装置に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
[A]ピペリジン構造、フェノール構造及びアニリン構造からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造を有するポリオルガノシロキサン化合物
を含有する液晶配向剤。
【請求項2】
上記ピペリジン構造が下記式(A−1’)で表され、フェノール構造が下記式(A−2’)で表され、アニリン構造が下記式(A−3’)で表される請求項1に記載の液晶配向剤。
【化1】

(式(A−1’)中、
は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜13のアラルキル基又は1,3−ジオキソブチル基である。
〜Rはそれぞれ独立して、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基又は炭素数7〜13のアラルキル基である。
は単結合、カルボニル基又は**−CONH−である。X〜Xはそれぞれ独立して、単結合、カルボニル基、**−CH−CO−又は**−CH−CH(OH)−である。**で示す結合手はピペリジン環に結合する。
*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【化2】

(式(A−2’)中、Rは炭素数1〜16のアルキル基である。但し、上記アルキル基は骨格鎖中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。nは0〜4の整数である。*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【化3】

(式(A−3’)中、R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1〜16のアルキル基である。但し、上記アルキル基は骨格鎖中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。*で示す結合手はポリオルガノシロキサン骨格の主鎖又は側鎖に結合する。)
【請求項3】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、
下記式(1)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン、その加水分解物及び加水分解物の縮合物からなる群より選ばれる少なくとも1種に由来する部分と、
下記式(A−1)、式(A−2)及び式(A−3)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物に由来する部分と
を有している請求項1又は請求項2に記載の液晶配向剤。
【化4】

(式(1)中、Xはエポキシ基を有する1価の有機基である。Yは水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数6〜20のアリール基である。)
【化5】

【化6】

【化7】

(式(A−1)中、R〜R及びX〜Xは上記式(A−1’)と同義である。
式(A−2)中、Rは上記式(A−2’)と同義である。
式(A−3)中、R及びRは上記式(A−3’)と同義である。
式(A−1)〜(A−3)中、Yは単結合、炭素数1〜16のアルカンジイル基である。但し、上記アルカンジイル基は構造中に酸素原子、硫黄原子、カルボニル基、エステル基、アミド基、又はこれらを2種以上組み合わせた基を有していてもよい。Zはカルボキシル基又は水酸基である。)
【請求項4】
上記式(1)におけるXが、下記式(X−1)又は式(X−2)で表される基である請求項3に記載の液晶配向剤。
【化8】

(式(X−1)及び式(X−2)中、sは0〜3の整数である。tは1〜6の整数である。uは0〜2の整数である。vは0〜6の整数である。*で示す結合手はケイ素原子に結合する。)
【請求項5】
上記式(X−1)又は式(X−2)で表される基が、それぞれ下記式(X−1−1)又は式(X−2−1)で表される基である請求項4に記載の液晶配向剤。
【化9】

(式(X−1−1)及び式(X−2−1)中、*で示す結合手はケイ素原子に結合する。)
【請求項6】
[A]ポリオルガノシロキサン化合物が、液晶配向能を有する構造を含む請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
上記液晶配向能を有する構造が、ステロイド骨格を有する炭素数17〜51の有機基、炭素数2〜20のアルキル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜20のアルキル基を有するアルコキシアリール基、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルシクロヘキシル基、炭素数1〜20のフルオロアルキル基を有するフルオロアルキルシクロヘキシル基及び炭素数1〜20のフルオロアルコキシ基を有するフルオロアルコキシシクロヘキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する請求項6に記載の液晶配向剤。
【請求項8】
上記液晶配向能を有する構造が、下記式(B−1)で表される請求項6又は請求項7に記載の液晶配向剤。
【化10】

(式(B−1)中、mは0〜4の整数である。)
【請求項9】
[B]ポリアミック酸及びポリイミドからなる群より選択される少なくとも1種の重合体をさらに含有する請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項10】
[C]下記式(2)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサン化合物をさらに含有する請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化11】

(式(2)中、Xは水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基又は炭素数6〜20のアリール基である。Yは水酸基又は炭素数1〜10のアルコキシ基である。)
【請求項11】
(1)請求項8、請求項9又は請求項10に記載の液晶配向剤を基板上に塗布し、塗膜を形成する工程及び
(2)工程(1)で形成した塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程
を有する液晶配向膜の形成方法。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項13】
請求項12に記載の液晶配向膜を備える液晶表示素子。

【公開番号】特開2011−252099(P2011−252099A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127352(P2010−127352)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】